なぜだか近所に一つはあるもの。
どこに住んでも必ずあるもの。
それはネコ屋敷である。
玄関先や生け垣の間、屋根の上にも軒先にもネコがふてぶてしくうずくまっている。たいていの場合「外」に対しては愛想はわるく、内向き志向の性格である。僕が乳児期を過ごした東京・中野の商店街にも、例に漏れないネコ屋敷が存在した。穏やかな冬の昼下がり、お陽様を求めてしなやかな体躯のネコたちが屋敷の窓際に現れると、小さな僕は音を立てて笑い、喜んだ。僕はうんと小さい頃から、犬よりも断然ネコ贔屓なのだ。
長崎のばぁばのうちの並びにも、この辺りでは地味に有名なネコ屋敷がある。普段は僕が安易に近寄っても、決して体をなでさせてはくれない誇り高きネコたちなのだけど、今日は屋敷の玄関先で、白に黒のドットの入った小さな子猫をみつけた。ちょん切れたようなしっぽが特徴の、立派な長崎野良ネコである。僕がそっと近寄ると、一瞬びくりと体を震わせて、それから僕の指の匂いを嗅いでペロリとなめた。かわいいな! 嬉しくなって子猫の背中をなでてやった。子猫は「ミャーオ、ミャーオ」と気持ち良さそうにないた。
すると突然玄関の戸が開いて、家主のおじさんが顔を出した。怒られる!と思った僕は、慌ててママの方に駆け寄って、彼女の後ろに隠れた。おじさんが言う。「持っていきたかったら、持っていかんね。こんネコたちは、みんな野良よ。うちのじいさんが餌ばやるもんやっけんね…。」それを聞いて僕はママに言った。「僕はまだ『ミャーオ』ってなくネコは持ってないんだよ。僕のにゃあにゃは『ミャーオ』って言わないんだよ。僕は『ミャーオ』ってなくネコが欲しいんだよ。」ママは目を丸くして驚いて、「そうなのか。それなら仕方ない」と言って、おじさんに「じゃあこのネコ、いただいて帰ります」と言った。こうして僕と子猫はきょうだいになった。子猫は「パンダ」と名付けられた。
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