私たちフェローには「オフィス」と呼ばれる小さな共有スペースがある。ルスホールという建物の3階に位置する,プログラム・コーディネーターの部屋と隣り合った空間で,日本語の書けないコンピューターが数台とメイルボックス,その上にフェローの出身国の旗11種類が並べてあり,それから5都市の時間を刻む5台の時計が,それぞれ勝手に時間を刻んでいる(パリの時間しか合っていない)。
3階に上がる階段は対面がすべてガラス張りになっていて,外の風景が見渡せるが,ルスホールの隣の敷地はあいにく工事中だ。新しい建物を建設中のようだが,まだ赤土を掘り起こしては別の場所に運ぶといった作業段階のようである。ここの3階は,2階が天井の高い一部吹き抜けの構造になっているため,実質4階くらいの高さにある。そのため,階段を上りきるのには多少時間がかかるし,「階段を上っているなあ」ということ以外のことを考える時間も少しある。 日々工事現場を目にしながら,そういえばこのような建設作業を上から眺めることなんて,今までになかった経験であることに気づく。そして,この観察がなかなか面白い。
大きなシャベルカーというのだろうか,もくもくと土をすくってはシャベルを180度回転させて,ちょうどぴったりのところに駐めてあるトラックの荷台に土を落とす。背中の土がいっぱいになると,トラックは所定の場所までその土を運んで荷台を約70度まで傾け土を落とし,またシャベルカーとの共同作業に戻る。これを,それこそ永遠に,続けるのである。
この永遠の作業と,すでにある例えばルスホールなどの完成した建物との間には,まったくつながりを想像することができないけれど,少し論文を書くことに似ているかも,なんて風にも思えている。永遠と思える地味な作業を続けるにあたっては,勇気を与えてくれるメタファーなのだ。
それにしても,何種類もの大型トラックにはそれぞれ名称があるだろうに,クレーン車くらいしか知らない自分の無知に気がつく。自分の生活している領域や日常的に使用するボキャブラリーが非常に限られたものであることに今更驚いたりしながら,毎日階段を上っている。
1.19.2008
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