自宅から大通りに出るまでの道のりに、比較的規模の大きい交差点が一つあるのですが、その付近の中央分離帯に「レフォルマン」がいます。いつもいるというわけではなく、平日の早朝から午後2時くらいまでいます。
「レフォルマン」というのはなにかというと、メキシコの主要紙の一つ「レフォルマ」を売っている人のことです。メキシコは、「人の動きの滞るところには経済が生まれる」という定理を地でいってるので、いくつもの道が交差していて赤信号で待つ時間が長いような交差点には、必ずといっていいほど新聞売りがいるのです。新聞売りだけでなく、他にもいろんな人がいます。果物売りとか、車のフロントガラス拭きとか、なにかパフォーマンスをやってお金をもらう人たちとか。でも、私にとってなぜか一番気になるのは、レフォルマンなのです。
レフォルマンがレフォルマンと呼ばれる(というか私が呼んでいる)所以は、もちろんレフォルマ紙を売ってるからではあるのですが、正確にはレフォルマ社が用意したらしい黄色と緑のつなぎのレフォルマン・スーツに身を包んでいるからです。太もものあたりにでっかい「REFORMA」のロゴが縦に入っています。遠くからでもすぐにわかる、彼こそはレフォルマンなのです。実は私は彼からレフォルマを買ったことは、記憶にある限り1度しかないのですが、毎朝彼がいつもの場所でいつものレフォルマンであることを確認し、安心します。
彼の仕事は、信号が赤になると、停車中のいわば上り線の車にレフォルマを売って歩くことです。彼の売り方には、なんというか、スタイルがあります。別にかっこよくはないのですが、ちゃんと自分の仕事を「支配」してる感がある。レフォルマンであることは、十中八九彼が第一志望に掲げた職業ではなかろうと思うのですが、彼の態度はあたかも彼が自分の自由意志によってそこにいるかのようなのです。
そんなレフォルマンがある日、レフォルマン・スーツを脱ぎました。私が昼過ぎに息子のお迎えにいくときには、だいたいいつもの場所で早朝に引き続きまだ新聞を売っているのですが、その日は珍しく早くにさばけてしまったのでしょう。つなぎ服を腰の辺りまで脱ぎ、中央分離帯の同僚たちと楽しげに語り合っているレフォルマンを目撃しました。つなぎの下に着ていたのは無地の焦げ茶色のTシャツでしたけど、これだけでだいぶ印象が変わるものですね。なんだかレフォルマンがいつもより男前に見えました(変身ヒーローが変身前に戻った状態)。レフォルマンの表情も、ずっと素に近い感じです。レフォルマン・スーツを脱ぐ瞬間が、彼がこちら側だかあちら側だかに帰っていく瞬間なのかもしれません。
明日もいるかな、レフォルマン。
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