ビーバーの着ぐるみからのぞく二つの目が
運転席の私を捉え こちらに手を差し伸ばす
窓を開け 彼に10ペソ硬貨を渡す
神の祝福と引き換えに
"Que Dios le bendiga*."
地下鉄だって同じくらい慈悲と哀れみに溢れてる
両親が病気なのだと 素足の娘は懇願する
ポケットの中の10ペソ硬貨を彼女の手に落とす
天使の祈りと引き換えに
"Que Dios le bendiga."
こんなとき私はいつも
ボードレールの身を売るミューズを思い出す
生まれも育ちも貴族でない 無数で無名の詩人たち
パンを稼ぐためには 信じてもいない詩をうたう必要もあろう
しかし彼らの方が私よりもずっと自由だ
その制約こそが 彼らを自由にしているのだ
彼らがいるのは不可視だが 確実に触知できる檻の中
それは境界という一個の思想である
どちらが中でどちらが外かは
自分がどちら側にいるかで決まるのだった
制約の中の精神の自由に 私はこの上なく憧れる
裏返された檻の中に 閉じ込められた我が精神の
*Que Dios le bendiga=あなたに神のご加護がありますように
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